石川県金沢市@盛永有登税理士事務所の市民農園日記

 
 
   
   ここは、ルネサンスの香り漂う中世ヨーロッパ。この世はまさに大航海時代!一攫千金を狙う

 若者たちが自分の命をかえりみずにこぞって海に出た。


   貧しい港町にひとりの青年がいた。その青年の名前はニコルといった。ニコルもそんな若者た

 ちのうちの一人だった。そして、そんな若者たちと同じようにニコルもいつしか船出を決意する

 ようになった。「貿易で成功したい、自分の生まれ育った町を豊にしたい…。」しかし、航海に

 出るには船がいる、共に危険な航海を旅してくれるクルー(仲間)も必要だ、航海先で売る地元

 の特産物も仕入れなければいけない。とどのつまりはカネがいる。ただし、ニコルにはカネもコ

 ネもなにもない。あったのは夢だけだったがそれでもニコルは明るかった。


  ニコルは自分の夢をカタチにするために航海のプランを練りそれを紙に書き出した。

   船の大きさはどうか(設備計画)、クルーは何人必要か(採用計画)、船の大きさを考えなが

 ら出航時に用意する特産物の仕入量はどれくらいか(仕入計画)、航海中に必要になる経費はい

 くらかかるか(経費計画)、始めに用意しなければいけないカネはいくら必要か(資金調達計画)

 、そして、航海を通じていくら売上を上げ、どれくらい儲けが出るのか(売上計画)。


   何度も何度もプランを修正しながら自分の夢(航海)を計画書にまとめ上げた。そして、この

 計画書を唯一の頼りにしてニコルは自分の夢の実現と町の発展のため支援者(出資者)を探し始

 めた。


   苦戦が続いた。苦労して作り上げた計画書の内容をことごとく否定された。「計画書どおりに

 は行かないよ。」初めて会ったばかりの青年に簡単にカネを出す者などいなかった。当然だろう。

 が、それでもニコルは明るかった。自分の
の実現と、貧しかったが生まれ育った町の発展を信

 じていたから。


   そして、少しずつ理解者が集まり始めた。純粋に自分の夢を熱く語るニコルに心打たれたのだ

 ろうか。「この町の未来のために、お前の夢にかけてみよう。」


   やっとカネが集まった。仲間はもう用意できている。集めたカネで船を買い、残りのカネで地

 元の特産物を買いあさり、いよいよ出航の時が来た。航海中は常に危険が絶えないだろう。嵐・

 海賊・伝染病に巨大海中生物?船が沈めばそれでおしまい。危険は承知のうえでの出航だ。さあ、

 夢に向かって!

  
 
(地元での収支)

    収 入:出資金 100(以下、単位省略)

支 出: 船   30/クルーの給料(往路分) 20/地元で仕入れた特産物 40

残 金:10(航海中の諸経費に充てる)


  やっとの思いで辿り着いた場所は中近東のとある大都市。地中海を過ぎるまでは良かったがそ

 こから先は大変だった。片道だけで1年近くもかかってしまったが、それでもなんとかここまでこ

 れた。

  
こちらの言葉はあまり良くわからなかったが身振り手振りで表現しながらニコルは地元で仕入

 れた特産物を売りまくった。


   ヨーロッパで仕入れた特産物は至極珍しがられ予想以上の高値で売れた。売り捌いたカネで今

 度は中近東の特産物を買いあさった。地元ヨーロッパで売るために。

(中近東の大都市での収支)

   収 入:地元の特産物売却代金 100

   支 出:中近東で仕入れた特産物の代金 100/諸経費 5

   残 金: 5(帰りの航海の諸経費に充てる)


   行きの旅で苦労したせいか、帰りの旅は随分順調で半年ほどで帰ることができた。地元から少

 し離れたヨーロッパの中でも比較的大きな都市で船を止めた。


   この航海は成功だっただろうか?ニコルは中近東で仕入れた特産物を売り捌いた。ここでも中

 近東の特産物は珍しがられ高値で飛ぶように売れた。ニコルはこの街で船も処分した。

(ヨーロッパの大都市での収支)

   収 入:中近東の特産物売却代金 400/船の売却代金 10

   支 出:諸経費 5

   残 金:410


   その後、地元の町に戻りクルーに残りの給料を払った。予想外に儲かったためボーナスも出し

 た。儲けのうち4割は税金として徴収されたが、これで地元の町が豊になればそれでいい。出資

 者には出資金100を返し当然、配当も支払った。もともとの航海予定は1年だった。航海期間

 が半年も伸びたためにニコルの帰りをあきらめていた出資者もいただろう。船が沈めばそれでお

 しまい。出資者にしてもそれは同じだったから、みなでニコルの帰りを喜んだ。

  
とりあえず危険な航海もここで一段落。残ったカネがニコルの戦利品だ。

(地元での収支)

   収 入: 0

   支 出:クルーの給料(復路分) 20/ボーナス 40/税金 100

配当金 50/出資金の返金 100

   残 金:100(戦利品)


   ここで、この1年半の航海でのカネの流れの整理と、損益計算書(儲け)を作成してみよう。


 期 間:出航から航海の終了まで(約1年半)
 @カネの流れ  A損益計算書(儲け)


@出航時点


  出   金       100
  船の購入代金      △30
  クルーの給料(往路)  △20
  地元での商品仕入代   △40
  残    金       10

A中近東出航時点

  残    金       10
  地元の特産物売却代   100
  中近東での商品仕入代  △100
  諸   費       
△5
  残    金        5

Bヨーロッパ大都市時点

  残    金        5
  中近東の特産物売却代  400
  船の売却代金       10
  諸   費             △5
  残    金      410

C地元の町(航海終了時点)

  残    金      410
  クルーの給料(復路)  △20
  クルーのボーナス    △40
  税    金     △100
  配   金       △50
  出資金の返金     △100

  手元残金(戦利品)  100

 

T 売 上 高           500

 内訳:中近東での売上高    100

    ヨーロッパでの売上高
  400

U 売上原価            140

 内訳:地元の町での仕入高 40
     中近東での仕入高 100

  売上総利益        360

V 経   費

    給 料      40
    賞 与      40
    諸経費      10
    船舶売却損    20  110     (購入代金30、売却代金10)

    利   益        250

W 税   金 ※利益の4割  100

X 利益処分

   配  金          50

   手許残金(戦利品)    100









   いかがでしょうか。こうしてみると航海中のお金の流れと最終的な儲けがとてもわかりやすく

 はないでしょうか。とにもかくにも最後に自分の手元に残ったお金がこの航海での儲けになりま

 す。


   これは上記の計算が航海の始まりから終わりを一つの計算期間として作成しているからです。

 航海が半年で終われば半年を、1年半なら1年半、3年であっても5年であっても航海は始まりから

 終わりまでがハッキリしているので計算がとてもわかりやすくなります。さらに、文章の構成を

 お金(キャッシュ)の流れを中心につくった(いくらもらって、いくら払って、いくら残った)

 ためさらにわかり良いものになっていると思います。



  
ただし、現代の会計制度は
適正な期間損益計算を要求していますので一つの航海を一つの計算

 期間とすることはできません。通常は1年間を一つの計算期間として計算しますので、出航から

 中近東までと、中近東から航海の終わりまでとを区切ってもう一度計算してみましょう。

  
次のページの計算表をご覧下さい。計算が随分ややこしくなったとは思われませんか。しかも

 最初の1年目の計算では利益が
35出ているのに残りのお金はしかありません。これも、現代

 の会計制度がお金の流れよりも儲け(損益)の計算を中心に考えているための欠点です。


期 間:出航から中近東時点まで(約1年間)

@カネの流れ

A損益計算書(儲け)

@出航時点

  出   金       100
  船の購入代金      △30
  クルーの給料(往路)  △20
  地元での商品仕入代   △40
  残    金       10

A中近東出航時点

  残    金       10
  地元の特産物売却代   100
  中近東での商品仕入代 △100
  諸  経  費      △5
  残    金       5

※税金は未払。というより払えない。

T 売 上 高       100

U 売上原価       40

   売上総利益         60

V 経   費

    給 料      20
    諸経費       5   25

   利   益         35

W 税   金 ※利益の4割   14

   税引き後の利益       21


期 間:中近東出発から航海の終了まで(約半年間)

@カネの流れ

A損益計算書(儲け)

Bヨーロッパ大都市時点

  残    金        5
  中近東の特産物売却代  400
  船の売却代金       10
  諸   費          △5
  残    金      410

C地元の町(航海終了時点)

  残    金      410
  クルーの給料(復路)  △20
  クルーのボーナス    △40
  税    金     △100
  配  当  金      △50
  出資金の返金     △100

  手元残金(戦利品)  100

T 売 上 高       400

U 売上原価           100

   売上総利益         300

V 経   費

   給 料      20
   賞 与      40
   諸経費       5
   船舶売却損    20    85
   (購入代金30、売却代金10

   
利   益         215


W 税   金 ※利益の4割   86

X 利益処分

    配  当  金         50

    残りの利益         79


   では、なぜ現代の会計制度は適正な期間損益計算を要求しているのでしょうか。それは、企業

 は永遠に存続するものという前提でいろいろなルールが作られているからです。だれも初めから

 会社を潰そうとして事業を起こす方はいないでしょう。10年先、20年先の存続をきっと願うこと

 でしょう。ここが航海との決定的な違いです。航海は
始まりから終わりまでがハッキリしている

 のに対し、
企業は、始めはハッキリしていても終わりはハッキリしていません。そめため、計算

 期間を最初からキチンと決めておかなければいつまでたっても損益の計算ができないことになり、

 なにかと不都合が生じてしまうことになるのです。


   しかし、計算期間を1年間で区切ってしまうと、今度はお金の流れと損益の状況が一致しないと

 いう欠点も生じてしまいます。売掛けや買掛け、受取手形や支払手形が存在する現在ではなおの

 ことでしょう。ややこしくなってしまった航海図では、次の進路の判断を難しくさせ船の舵をと

 り違えるという危険も生じてしまうかもしれません。

  
当事務所は、最新の経営データと戦略財務・意思決定システム等を駆使し、経営の航海図とも

 いうべき経営計画書、進路決定の羅針盤となる貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計

 算書から得られる情報を基に、財務内容についての適切な説明とアドバイスについて『とにかく

 わかりやすく!』を目標に、今後、一層の努力を重ねることで関与先企業の存続と発展をサポー

 トいたします。                      

 
    平成14年2月


 所 長
 税理士

  も り な が  あ り と
  盛 永  有 登

 





   盛永有登税理士事務所
〒920−0845
石川県金沢市瓢箪町19番5号
TEL076‐260‐9132
 FAX076‐260‐9135